アシュリー

プロジェリアの少女、アシュリーの記録を見た。既にプロジェリアの平均寿命１３歳を越えて１６歳なのだが状況は芳しくない。時々、体のあちこちが痛くなるという。じっとして動かないアシュリーの姿が何度も映されていた。アシュリー自身が語るところによれば、「じっとしていれば数分で痛みはおさまるの。もし、おさまらなかったら、天に召されるの。」だという。

この驚くべき諦観の姿勢は、ぜひ教えてもらいたいくらいだ。ほんの数年前、私は、パニックがひどくなり、「死にそう」だと医者に駆け込み薬漬けにされかけたのだった。私にアシュリーの強さが少しでもあったならと思うと恥ずかしい限りだ。今、アシュリーはどんな気持ちで生きているのだろうか。

既に弟２人、そして今度の放送では妹も生まれたことが流されていた。最初に紹介された時は、母、ロリーと二人きりで必死に生きている姿だった。身近に死が迫っているアシュリーにとって弟や妹たちの存在はうれしいものの、さみしい気持ちも強いのではないか。やがて自分は忘れられると感じてしまうからだ。私ならば耐えられないかもしれない。

プロジェリアとして生まれたアシュリーは何も悪いことはしていない。単に遺伝子が異常だっただけだった。生まれ直すことはできないにしても老化を止められないものかと思う。脳の研究と同じく、遺伝子の研究はまだまだ、「治す」ところまで進化していないようだ。将来、プロジェリアという病気も早期に治すことも可能になる日が来ると思う。人類は、不可能を可能にして来たからだ。

たぶん、犠牲者がある程度の数になると「法則」がわかってくるのだと思う。がんでもそうなのだが、免疫的な治療が有効になってきている。プロジェリアにも適用できるのではないのだろうか。プロジェリアの兆候を見つけると、即座に遺伝子の修復を強力にする物質を注入するとかだ。

（つづく）