貯金

以前、私が品定めされた女のことを書いたが、あることを失念していたことを思い出した。それは、「貯金」のこと。私が貯金しているのかどうかを電話をしてきた時に聞いていた。「無い」と言うと、しばらく沈黙していたようだった。明らかに以降の接し方が違っているように思えた。それとそう時間が経たないうちに、「品定め」事件があったのででっきりそれが原因かと思えたのであった。

いくら「愛」があっても経済的な裏付けは必要とはよく言われることだ。そして、金の切れ目が縁の切れ目なのだろうと思う。「愛とはそんなものではない。」と言ってみても当事者には空しいものだろう。実際、男に稼ぎが無くて失敗する夫婦というのはよく聞く話だ。誰でも実感として、そう思うのではないか。仕事が永遠にあればいいのだが、無いときに役立つ「貯金」が欲しいのは誰でも同じだろう。私を品定めした彼女にとって、それが無い私など検討にさえ値しなかったのだろうということも想像できる。

だが、私はそれほど「愛」についてわかっているわけではないのだが、金の切れ目が縁の切れ目的な恋愛、あるいは疑似恋愛ごっこはゴメンだということは言えると思う。私は、年齢的にも容貌的にもそんなに贅沢が言える身分ではないことを理解しているのだが、その私であっても、そういう「恋愛」では長続きしないだろうと思える。金で結ばれた関係は、金で切れるのも当然のことだ。それよりも、まず、相手との関係を大事にすることが大切だと思える。

「愛」というものが見えないものだけに、金結恋愛（結婚）というのは、金を「愛」の代用と考えているのかもしれない。ハッキリと見えるところもわかりやすい。私が、もっとも大事だと思うことは二人が仲が良いかどうかということ。絶対的な貧乏では、確かに愛のある生活は難しいかもしれないのだが、ほとんどのことは「愛」ゆえに耐えられるのではないかと私は夢想している。

私にも親友と呼ぶべき友がいる。その彼と知り合った頃のことを思い出すと、なんとなくではあるが「つれあい」とはこうあるべきではないのかという青写真が描ける。そこでも、もちろん金銭など何のかかわりもない。あるのは、「あいつはええやつだのう。」という気持ち（思い込み？）だけだ。それがあるから、３０年以上もつき合ってこられた。しかも、その間、私が京都に出たり（７年間）、今も東京にいたり（現在、１４年間）して物理的に離れているのだ。

「愛」とは、金でもなく、一緒にいることでもなく、ただ、「ええやつだのう。」という気持ちのような気がする。また、それが私の受け入れ可能な「愛」のかたちかもしれない。今時、そんな女はいないかもしれないが、死ぬまで可能性は追求するべきだろう。自分で諦めてしまっては、それこそ可能性はゼロだ。

私に心配事があるとすれば、「ぼんやりとした不安」に過ぎない。自分が不注意なだけと言えばそれまでだが、けっこう、「浮き沈み」が激しい。死んだと思ったら生き返ったという根本的な生い立ちもかかえている。高校までは、比較的に順調だったが、それ以降は自分の生き方を見つけられなかったわけだ。その結果、浪人４年、失職数知れずだった。

今でこそ仕事は続けているが、余裕で生きているわけではないのですぐに行き詰まるかもしれない。堂々としていればいいのだが、すぐに不安になって暗くなるところが小心なところだ。それをもって魅力無しと言われれば、ぐうの音も出ない。

私の強みはただ１点だけ。「やる気」だけだ。今の仕事もやる気だけで獲得したようなものだった。だから、これからも「やる気」だけで生きるしかないと思っている。実際、安定を求める人々には「やる気」が無い。この国を壊してきた公務員も「やる気」が無いので現状の示すとおりの状態になったと理解している。

そんな私を「おもしろいやつだのう！」と評価する女が現れたら私はいちころだろうと思う。私が、そのように考える根拠は、これまでにも少数ながら私のファンもいたという事実だ。ある時言われた言葉。「あんたが普通になったら何の魅力も無い。」と。老成することなく、じいさんになっても青臭いことを言う私でいなければならないのだろう。