ふるさとの空気

私がこの地で暮らしていた時代から既に１０数年、何も考えていなかった少年時代から３０年以上経っているが、変わらないものもある。空気のにおいだ。体調の悪い今でも、この空気を朝とか夕方とか吸うと不思議に元気が出てきて何でもやったろうという気分になる。

昨日、用事があって市内に出かけてみたら、東京で普通に見られる光景が岡山でもあることを知って驚いた。それは、昼間の昼食に向かうサラリーマン、ＯＬの姿だ。私は市内でも外れたところで仕事をしていたので、東京のような光景はあまり見たことがなかった。実は岡山でも普通にあったのだ。仕事が無いので、こういう光景は無いものだと思っていたのだ。そうは言ってもごく少数の企業がそうだということで、大半の零細企業は食事をする時間も惜しんで働いていることだろう。

今、いろんな心配事があって体調が悪かったりするのだと思うが、実際にはそれが当たり前の姿なので改めて感慨にふけるまでのことはない。心配や危険が無いような生き方をするのも手だが、それでは生きているとは言えないのだ。毎日、危険と隣り合わせで不安ながら生きているのが普通の人間のあり方だろう。田舎で休息しつつそんなことを思う。

片付けをしていて昔の参考書類がそのまま残っているのに驚いた。これは、私が保存するように言っていたからだ。いつか、当時の悔しさをはらす時が来るのではないかと思ってとっておいたのだった。しかし、そのいつかは来ないだろうと思う。私の生きている間に、大学がやる気さえあれば誰でも行ける、研究機関になることは無いような気がするので。私は、結局、大学へ行けなかった敗北者で終わりそうだ。